NILKLY学園~プロローグ~
僕の名前は、伊吹サラ夫。
NILKLY学園に通う普通の高校生である。
季節は春、生暖かい、気持ちのいい風が僕の頬を撫でる。
今年で僕は高校二年生になる。
「伊吹ー!!!!ちゃあーー!!!」
後ろから元気いっぱい声をかけてきた彼は僕の相棒
一平澤 芽衣ノ助(ひらさわめいのすけ)
小中高生と一緒に過ごしてきた俗に言う幼なじみである
身長は僕より10cmほど高い、足が長い、そして顔が小さい。なにより男の子とは思えない可愛らしいルックスをもちあわせている。あざとい、こいつはとてもあざといのだ。
「ちゃあ、おはよう。今日も元気だね」
ちなみに「ちゃあ」とは芽衣ノ助のオリジナル挨拶だ。
「新学期ってワクワクするよね〜クラス替え緊張する〜!サラ夫とまた同じクラスだといいな〜」
そういうと相棒は俺の方に顎を乗せてきた。
トゥンク……………
クソッ……かわいい、なんなんだ。
僕だって同じクラスがいいに決まってるじゃないか。
「そうだなぁ、去年同じクラスになれたの、運が良かったみたいなところあるからなぁ…」
ドキドキした感情を悟られないように至って冷静に返事をする。
「遅刻しちゃうからはやく行くぞ〜〜〜!」
そういって相棒は僕の手を引いて学校へと急いだ
ザワザワザワザワ
下駄箱前に掲示されてるクラス発表ゾーンは人で溢れかえっている
んーと、僕はどこのクラスだろうか、
「めいちゃは2-Cだったー!サラ夫は??」
残念だ……今年はどうやら相棒と離れ離れになってしまったようだ。
「僕は2-B、田中先生クラスだったよ…」
はぁ、ツイてない、田中先生クラスになってしまうなんて…
新学期早々悲しい気持ちになってしまった…
「ええええ、田中先生クラスーー??おつじゃーん!(笑) 寂しいけど休み時間会いに行くからねー!じゃあな!」
相棒は意外にさっぱりとしていて、僕の背中をバシバシッと叩いたあと、同じクラスの仲間を見つけて楽しそうに教室へと向かって行ってしまった。現金なヤツめ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
さぁ、新学期というものは何回経験しても慣れない。とても緊張するものである。友達はできるだろうか、馴染めるであろうか…
ガラガラ
教室に入り辺りを見渡すと既に仲良しグループが何組か出来ていて出遅れ感を感じた。
とりあえず教室の隅の空いてる席に腰をかけた。
「ふぅ………」
僕は人見知りである、しかも極度の。
陰キャの極みなので既に出来上がってる仲良しグループに突っ込んでいける勇気はないし、僕みたいなつまんない人間に声をかけてくれる人はいない。
「(これは一年間ぼっちコースかな……)」
またもや悲しい気持ちになりがっくしと項垂れていると
「……あ、の…隣いい?」
突然ミステリアスなオーラを纏った美少年に小さな声で話かけられた。
「あっ、あ、全然大丈夫!むしろウェルカム!」
まずい……
まさか人から話しかけられるとおもっていなかったので声が上ずってしまったし、なかなか気持ち悪い返答をしてしまった…なんだウェルカムって恥ずかしい……
美少年は小さく会釈をすると、のそりのそりと席に座り始めた。そしておもむろにスマホを取りだしゲームを始めた。
おお、すごい猫背だ……
「(あ!彼がやっているのはあの某アイドル育成ゲームあんさんぶるハーツではないか!)」
「もしかして、あんさんぶるハーツがすきなの??
ごめん!その、画面がちらっと見えてしまって……」
すると彼は驚いた表情でこちらをみた。
「…すき……。君もやるの?」
「そんなに詳しくはないんだけどやってる!知ってる人がいて嬉しいよ!僕の名前は伊吹サラ夫!よろしく!」
同じ趣味の人を見つけつい嬉しくなってしまいヲタク特有の早口をかましてしまう。
「僕は、蒼山ユリ雄(あおやまゆりお)よろしく。」
そう言うと彼は頬を赤らめ優しくはにかんだ。
その笑顔に深くにもドキッとしてしまったのは彼がとても綺麗な顔をしているからだろう。
いかんいかん、いくら顔が綺麗だからってドキドキしていいものか。相手は男だぞ!
「よろしくユリ雄。僕のことは好きに呼んでくれて構わない。クラスに馴染めるか不安だったんだけど安心したよ!改めまして1年間よろしくな!」
そうして彼と握手をした、まだすこし胸がドキドキしていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
────「新入生入場」
「あー、めんどくさいな、なんで僕たちが入学式に出席にしなきゃ行けないんだよ……」
「わかる、ドチャクソ眠い、ゲームしたい」
うちの学園では始業式と同日に入学式も行う珍しい学園だ。
入学式は全校生徒が出席するという決まりがある。中には面倒くさがって出席せずに帰ってしまう在校生もいるが、僕とユリ雄は至って真面目な生徒なので、小声で文句を言いながらもしっかり式に出席していた。
「眠かったら僕の肩によりかかっていいよ」
「んなっ、何言ってんだよ」
「はは(笑)冗談(笑)寝ちゃダメだよ。」
たまにユリ雄は冗談を言って僕を困らせる。
こいつはいつも真面目な顔で冗談を言うので本気なのか冗談なのか分からないことが多い。
「新入生代表挨拶、新入生代表「小林 潤一(こばやしじゅんいち)」」
「(おっ、新入生代表挨拶か…)」
「はい!」
凛々しい声で返事をしたその新入生は、背筋をピンとのばし少しぎこちなさそうに歩きながら教壇へと向かった。
ほう…眼鏡をかけていていかにも真面目そうな優等生って感じの1年生だ。
なんて呑気に眺めていたが、
彼がスピーチを始めると会場の空気が変わった。
「あたたかな春のおとずれと共に-------」
ハッとして心を奪わた。
きっと会場中のみんなが息を飲んだ
すごく澄んだ綺麗な声をしている。透き通ったガラス玉のような、汚れのない綺麗な声。
一素敵だ
彼をもっと知りたい、彼と会話してみたい。
人を惹きつける力が彼にはある。
僕はそう思った。
挨拶を終えると新入生の彼はほっとしたような顔で振り返り、大きく一礼したあと教壇を後にした。
ついさっきまでやる気のない僕だったがこの時だけは思いっきり拍手をした。素敵だった。
隣のユリ雄も感動したようで、ふんふん頷きながら小さく拍手をしていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
式を終え、教室に戻る。
「いやぁ〜眠かったけど何とか乗りきったな〜、ってか去年入学してきたのが懐かしい」
「それな、眠過ぎて死ぬかと思った」
ユリ雄は大きくあくびをしたあと机に突っ伏した。
僕も授業始まるまで少し寝ようかな…なんて考えていたその時一一
「イブちゃんせんぱーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
派手髪でチャラそうな男がとんでもない大声で教室に乗り込んできた。
そしてあろうことか僕に飛びついてきたのである。
「うっうお??!!?!?」
突然の抱擁に驚き、目が回りクラクラしていると
「おっひさしぶりでーーす!イブちゃん先輩!!会いたかったーーーー!!!」
さらにきつく僕を抱きしめる。
何だこの馬鹿力は…僕は絞め殺されるのか……?
意識が遠ざかっていく…僕はここで死ぬのか…なんて酸素が薄くなっていく脳内で考えていると
「あっ!ごめんなさい!嬉しくてつい力加減間違えちゃった☆先輩起きてぇーー!」
今度は激しく体を揺さぶられる、ゲェ…吐きそう
思い出した、このスーパー元気っ子は
中学時代同じ放送委員会で後輩だった
平山・ジェニファー・みちる だ。
当時から僕にすごく懐いていて、可愛がっていたんだっけな。
「ゲホッ…ハァハァ…ジェニ…!うちの学園受験してたのか?」
「先輩追っかけてNILKLY学園まで来ちゃいましたよー!いぇーーい!」
犬ではないがしっぽが見える、ブンブン嬉しそうに振っている
朝から元気である、そして周りの目線が痛い。
すると突然ジェニに抱かれていた体が誰かの手によって開放される。
「離れなよ…伊吹が嫌がってる」
「ナッ!!!!!!ユリ雄!!!」
おかしい、なぜ僕はさっきまで机で突っ伏して寝ていたはずのユリ雄の胸の中にいる??
…助けてくれたのか?
不覚にもドキドキしてしまっている自分がいる
静まれ、僕の心臓の音!!!!!
「むぅ!誰ですかー!イブちゃん先輩は別に嫌がってません!むーかーつーく!先輩返してー!」
「ダメ、伊吹が可哀想」
あわわわわ、言い合いを始めた2人に挟まれ腕を両方に引っ張られている。腕が引きちぎれそうだ。
痛い……誰か助けてくれ………
「ほらー、授業はじめっぞー!席つけー!」
なんと!!!!!
救世主、田中先生だ………。
「むうーーー!また遊びに来ますね!イブちゃん先輩!!今日からまたよろしくお願いします!」
そう言ってジェニは急いで自分の教室へ帰っていったのだった。
「嵐のように来て去っていったなあいつ…入学早々大丈夫かな?ホームルーム中じゃないんだろうか…」
悪いやつじゃない、ジェニはバカ素直で本能のままに突っ走るタイプ、かわいい。犬みたいでつい僕も甘やかしてしまう。馬鹿力の持ち主なのでさっきみたいにたまに強く抱きしめられて死にそうになることもあるが………
僕を追いかけてうちの学園まで来たとは、驚いた。 あとでLINEしてやろっと
「…さっきの、誰?」
少しつまんなそうな顔をしているユリ雄に声かけられた。
珍しい。
彼は比較的、感情を表に出すタイプではなさそうでいつも大体同じ顔をしている。
そんな彼が拗ねたような寂しそうな、つまんなそうな顔をしながら僕に尋ねてきたのだ。
「あー、中学時代の可愛がってた後輩だよ。驚かせてごめんね?でも少し助かったよ(笑)」
そう答えるとユリ雄は安堵したような表情で答えた。
「あっ……そうなんだ…なるほどね、ただの後輩ね…わかった」
なんだろう?心配してくれたのかな?
可愛いやつだ。
「伊吹、蒼山うるさいぞ」
田中先生に注意をされてしまったので
2人で肩をすくめながらアイコンタクトをした。
なんだか楽しくなりそうな予感がする
新学期の始まりだった。
続く(?)
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